会計検査院は3月10日、特定健康診査(メタボ健診)などの受診者に疾患が見つかった場合、そのまま同じ医療機関で治療を開始すると病院側は初診料を請求できないルールになっているにもかかわらず、過大な診療報酬を受け取っていたケースが多く確認されたとする調査結果を報告した。
検査院は、メタボ健診や後期高齢者健診の実施状況を調査。健診実施日と同じ日に、健診を受けた医療機関でそのまま治療を受けたケースで、初診料の算定が適切になされていたかを調べた。健診実施日の再診料の算定状況についても検査した。制度では、受診者に疾患が見つかった場合、健診を実施した医療機関が引き続き治療を開始すると、初診料は算定不可とされている。健診で実施される問診の内容が、一般的な初診時の診療行為と重複する部分があるために設けられたルール。
検査院が18道府県で請求された2022年10月分の医療費を調べた結果、24年12月までに調査を終えた104医療機関のうち94機関で、健診日に初診料を算定していた。
健診日に再診料を算定することについては明確なルールがないものの、検査院は「再診に相当する診療行為には問診など基本的なものが含まれるため、再診料も算定するのは不適切」と指摘。しかし、調査によると18道府県の約7400医療機関で健診日に再診料を算定していたという。
検査院の推計によると、「算定不可」の初診料は約1億3600万円、「算定不適切」の再診料は約4億4600万円。国の医療費負担額はそれぞれ約5100万円、約1億5700万円とされる。
決算期を変更することで節税につながることがある。例えば、ある年の決算月に予想外の利益が出ることが決算期前に分かったとする。その会社が節税以外の理由も含めて決算期を1カ月早めれば、元々の決算月に発生する利益を来期に持ち越すことができ、次の1年を掛けて節税対策をじっくり練ることが可能となる。
ただし決算期を変更すると減価償却や法人税の軽減税率の計算に関する調整に手間が掛かる。また期の途中で変更すると事業年度は当然短くなるため、他の事業年度との業績比較が困難となる。納税期限が前倒しとなり、資金繰りに悪影響が出ることにも注意を払わなければならない。
決算期はむやみやたらと変更するものではないが、会社の状況に応じて変更することは検討に値するだろう。その場合、株主総会の特別決議を経て定款の変更を行い、議事録のコピーを税務署や都道府県税事務所、また事業所を管轄する地域の市町村に、書類を提出することになる。
東京地検特捜部は2月26日、大阪国税局の元職員と東京・世田谷区の不動産会社代表の2人を法人税法違反(脱税)の罪で起訴した。2人は共謀して2020年4月までの1年間に、この不動産会社が架空の出資金取引で損が出たように見せかけるなどして、約2億1千万円の所得を隠し、法人税約5100万円を脱税したとされている。東京地検は2人の認否を明らかにしていない。
元職員は大阪局で法人調査などを担当していたが2010年ごろに退職。その後はコンサルティング会社などを経営し、全国で節税に関するセミナーを開いていた。税理士の資格はない。元職員と不動産会社の代表は19年ごろに紹介で知り合ったという。
今回の事件では、元職員が所有する合同会社に対して不動産会社が出資。合同会社の業績が悪化したと見せかけ、不動産会社にも損失が出たように装っていたとされている。しかし実際には、出資金自体が架空で、損失は発生していなかった。元職員は「脱税指南」の報酬として約1700万円を得ていたものと見られている。
東京地検特捜部は2月6日の時点で元職員を法人税法違反(脱税)の容疑で逮捕。25日には東京国税局査察部が不動産会社代表を東京地検に告発していた。
税務調査の際に、自社の経理の正しさを主張するうえで根拠となる資料には、自社以外が作成した「外部証拠」と、自社が作成した書類である「内部証拠」がある。当然、証明力は外部証拠の方が大きい。これに該当するのは仕入先から送られてくる請求書や領収書などだ。一方、受け取った領収書などを紛失し、メモを残すとすれば、これは内部証拠に該当する。
だが自社内で完結してしまう取引は外部が絡まないため、内部証拠しか残せない。例えば役員報酬の決定にあたっては、仮に会社が再建中で金融機関などの債権者から役員報酬の金額を決定されたとしても、会社法上は、株主総会決議、取締役会決議、代表取締役の決定などを経て行われる。外部証拠ほどの証明力がないとしても、議事録、決定書を内部証拠として作成保存する必要があるだろう。なお書類以外にも、各種社内規定も同様に税務上の根拠となる。
日本証券業協会はこのほど「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」を公表した。調査によると、2024年に新NISAで利益が出たひとの割合は「成長投資枠」で70.2%、「つみたて投資枠」で82.8%だった。
NISAは株や投資信託の利益・配当にかけられる約20%の税金がゼロになる制度で、24年に仕組みが大幅に見直された。新しい制度(新NISA)には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、それまでの“枠”とは異なり両方の枠で同時に投資ができる。年間投資額も拡充され、成長投資枠が従来の2倍の年間240万円、つみたて投資枠は3倍の同120万円となり、併用すれば年間360万円の投資が可能となった。保有限度額は2倍以上の1800万円となり、非課税で保有できる期間も無期限に拡充されている。
今回の調査によると、24年に新NISAで金融商品を購入した調査対象者7610人の平均購入金額は103.3万円だった。利用者の年収は300万円未満が39.7%、300万円~500万円未満が27.7%、500万円~700万円未満が17.1%、700万円~1千万円未満が10.0%、1千万円以上は5.6%だった。
成長投資枠での投資でプラスとなったひとの割合は70.2%、マイナスは12.2%。つみたて投資枠ではプラスが82.8%、マイナスが2.3%だった。
購入銘柄のタイプは、成長投資枠では「日本国内株式」が48.8%で最多。「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が13.1%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が3.2%などだった。つみたて投資枠では「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が36.8%で最多。「日本除く投資信託(インデックス型)全世界株式」が18.5%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が5.6%などとなっている。
自社の役員や従業員が亡くなったとき、会社として「弔慰金」を出すことがある。この弔慰金については会社の福利厚生の一環として、損金に含めることが可能だ。ただし弔慰金の額などによっては税務署に認められず、遺族には相続税がかかってしまうことある。
弔慰金の金額がどれくらいであれば法律上、「相当」と言えるのか。国税庁によれば、業務上の死亡であれば「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×36カ月分」、業務上の死亡でなければ「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×6カ月分」が相当としているようだ。
では「業務上の死亡」と、「普通給与」とは何を指すのか。まず「業務上の死亡」とは、「直接業務に起因する死亡または業務と相当因果関係があると認められる死亡」を指す。例えば業務のための行為により起きた事故や、業務に従事したことが原因で患った職業病、通勤途中の事故によって死亡したケースなどは「業務上の死亡」に該当する。逆に、業務中であっても、業務と無関係の持病を原因として死亡すれば「業務上の死亡」に該当しない。
これらの基準は、労災保険の支給要件にある「業務遂行性」と「業務起因性」と同じ考え方のため、何が「業務上の死亡」で何がそうでないかは労働関係法における「業務災害」に該当するかどうかで判断できる。業務災害については、厚生労働省がより具体的な基準を示している。
また「普通給与」とは、賃金給料のほか、扶養手当や勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計を指し、賞与は含まれない。非常勤役員などで賞与しか支給を受けていないケースなら、その役員が直近に受けた賞与、または業種や規模の類似する企業におけるその役員と同様な地位にある役員の普通給与や賞与の額などから、「もし普通給与と賞与の両方の形態で支給を受けていたとしたら、普通給与部分はいくらだったか」を算定する。役員への弔慰金が高額すぎると、給与扱いどころか会社の損金にもできなくなる。
弔慰金の支給にあたってトラブルを避けるためには、あらかじめ弔慰金の支給規定を作成して、周知しておくことが望ましい。税務調査対策だけでなく、遺族とのトラブルを防止するためにも、弔慰金規定を置いておきたい。