お役立ち情報 2025

2025年9号(2025/3/7)

<タックスニュース>証券業協会 新NISA調査  利用者の7割超が利益

 日本証券業協会はこのほど「新NISA開始1年後の利用動向に関する調査結果(速報版)」を公表した。調査によると、2024年に新NISAで利益が出たひとの割合は「成長投資枠」で70.2%、「つみたて投資枠」で82.8%だった。

 NISAは株や投資信託の利益・配当にかけられる約20%の税金がゼロになる制度で、24年に仕組みが大幅に見直された。新しい制度(新NISA)には「成長投資枠」と「つみたて投資枠」が設けられ、それまでの“枠”とは異なり両方の枠で同時に投資ができる。年間投資額も拡充され、成長投資枠が従来の2倍の年間240万円、つみたて投資枠は3倍の同120万円となり、併用すれば年間360万円の投資が可能となった。保有限度額は2倍以上の1800万円となり、非課税で保有できる期間も無期限に拡充されている。

 今回の調査によると、24年に新NISAで金融商品を購入した調査対象者7610人の平均購入金額は103.3万円だった。利用者の年収は300万円未満が39.7%、300万円~500万円未満が27.7%、500万円~700万円未満が17.1%、700万円~1千万円未満が10.0%、1千万円以上は5.6%だった。

 成長投資枠での投資でプラスとなったひとの割合は70.2%、マイナスは12.2%。つみたて投資枠ではプラスが82.8%、マイナスが2.3%だった。

 購入銘柄のタイプは、成長投資枠では「日本国内株式」が48.8%で最多。「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が13.1%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が3.2%などだった。つみたて投資枠では「日本含む投資信託(インデックス型)全世界株式」が36.8%で最多。「日本除く投資信託(インデックス型)全世界株式」が18.5%、「投資信託・日本国内株式、債券、REIT」が5.6%などとなっている。

<タックスワンポイント>弔慰金を損金に算入するポイント  キーワードは「業務上」「普通給与」

 自社の役員や従業員が亡くなったとき、会社として「弔慰金」を出すことがある。この弔慰金については会社の福利厚生の一環として、損金に含めることが可能だ。ただし弔慰金の額などによっては税務署に認められず、遺族には相続税がかかってしまうことある。

 弔慰金の金額がどれくらいであれば法律上、「相当」と言えるのか。国税庁によれば、業務上の死亡であれば「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×36カ月分」、業務上の死亡でなければ「死亡当時の賞与以外の普通給与の月額×6カ月分」が相当としているようだ。

 では「業務上の死亡」と、「普通給与」とは何を指すのか。まず「業務上の死亡」とは、「直接業務に起因する死亡または業務と相当因果関係があると認められる死亡」を指す。例えば業務のための行為により起きた事故や、業務に従事したことが原因で患った職業病、通勤途中の事故によって死亡したケースなどは「業務上の死亡」に該当する。逆に、業務中であっても、業務と無関係の持病を原因として死亡すれば「業務上の死亡」に該当しない。

 これらの基準は、労災保険の支給要件にある「業務遂行性」と「業務起因性」と同じ考え方のため、何が「業務上の死亡」で何がそうでないかは労働関係法における「業務災害」に該当するかどうかで判断できる。業務災害については、厚生労働省がより具体的な基準を示している。

 また「普通給与」とは、賃金給料のほか、扶養手当や勤務地手当、特殊勤務地手当などの合計を指し、賞与は含まれない。非常勤役員などで賞与しか支給を受けていないケースなら、その役員が直近に受けた賞与、または業種や規模の類似する企業におけるその役員と同様な地位にある役員の普通給与や賞与の額などから、「もし普通給与と賞与の両方の形態で支給を受けていたとしたら、普通給与部分はいくらだったか」を算定する。役員への弔慰金が高額すぎると、給与扱いどころか会社の損金にもできなくなる。

 弔慰金の支給にあたってトラブルを避けるためには、あらかじめ弔慰金の支給規定を作成して、周知しておくことが望ましい。税務調査対策だけでなく、遺族とのトラブルを防止するためにも、弔慰金規定を置いておきたい。

2025年8号(2025/2/27)

<タックスニュース>香港のゲーム会社に18億円追徴  「グループリクエスト」で発覚

 人気のオンラインゲームなどを配信する香港のゲーム会社「ヨタゲームズ」が2022年までの3年間で、日本のユーザーによるアイテム購入などで発生した消費税計約15億円を納めていなかったとして、東京国税局から無申告加算税を含めて約18億円を追徴課税されていたことが分かった。

 当局は、同社が日本子会社に対して保有していた約15億円の債権を差し押さえた。同社は税務調査に協力的ではなく、当局に財産散逸の恐れがあると判断されたようだ。国税通則法で定められた「繰り上げ請求」という手法を使い、通常より早期の差し押さえを実施した。同社は22年までの3年間に、日本市場で約150億円を売り上げていたが、消費税を申告していなかった。

 当局では、海外事業者の多くが利用する配信プラットフォームがあるシンガポールの政府に対し、租税条約に基づいて業者リストを求めるなどして税務調査を行った。しかし、同社が税務調査に協力的ではなく、日本での納税窓口となる「納税管理人」も置いていなかったため、当局では自主的に納税する見込みがないと判断し納付期限を繰り上げる請求を行った。だが、期限を過ぎても納税しなかったことから、通常より早い10日ほどの手続きで国内にある子会社の財産を差し押さえた。

 日本では15年の税制改正で、オンラインゲームなどの国境を越えて配信されるデジタルコンテンツについて、配信元である海外事業者に日本国内のユーザーが支払った代金には消費税がかかることを明確化した。この税制改正により、海外事業者には消費税の申告・納税が義務化されている。

 消費税を免れている海外事業者を把握するため、各国の税務当局間では租税条約に基づく「グループリクエスト」という仕組みを利用している。調査対象を特定することなく、一定の条件を満たした事業者の情報をまとめて提供するよう、相手国の税務当局に求めることができる。

 25年4月からは、海外事業者が日本で売ったアプリにかかる消費税について、配信プラットフォーム側に課税する制度がスタートする。これまではアプリを開発した海外事業者側に納税義務があったが、今後は配信プラットフォーム側が事業者から代理徴収するかたちで日本に納税する。

<タックスワンポイント>会社の制服に税金が課される例外  私服にも使えると給料扱いに

 従業員に支給または貸与する制服は、給与所得として源泉徴収する必要はない。従業員が制服の支給で得る経済的利益は、制服を必要とする社内ルールから生じた副次的な利益に過ぎず、給与所得者に特別な利益を与える目的で与えられたものではないからだ。さらに、給与所得者の役務提供に対する対価という性格も極めて希薄だということもある。

 ただし、いくら会社が「制服」と呼んでいても、税務上、制服と認められないこともある点には気を付けたい。実は、非課税となる制服には一定の決まりがある。その事務服や作業服の貸与・支給が非課税となるためには、(1)もっぱら勤務する場所で通常の職務を行ううえで着用するもので、私用には着用しないあるいは着用できないものであること、(2)事務服等の支給または貸与が、その職場に属する者の全員または一定の仕事に従事する者の全員を対象として行われるものであること――が必要だ。

 さらに厳格にいえば、着用する者がそれによって、一見して特定の職員または特定雇用主の従業員であることが判別できるものであることが条件となる。例えば、私服にもなり得る一般的なスーツを支給した場合には、給与扱いとなり、源泉徴収しなければならない。

2025年7号(2025/2/20)

<タックスニュース>確定申告 住宅ローン控除の年末残高情報  マイナポータル連携で活用可能

 2月17日に始まった2024年分の確定申告では、住宅ローン控除の手続きに関して、年末残高情報をマイナポータル連携で活用可能とした制度が導入されている。国税庁がこのほどまとめた「FAQ」によると、2月中旬以降に登録したケースでは、年末残高情報の格納が通知されるのは、登録完了から「2~5日後」となっているので注意したい。

 住宅ローン控除を適用する納税者は、金融機関から交付を受けた年末残高証明書を、確定申告や年末調整の際に税務署または勤務先に提出する必要がある。だが年末残高調書を用いた新方式では、金融機関が納税者の住宅ローン残高情報を税務署に電子データで送信し、税務署はそれをもとに年末残高情報の電子データを作成。納税者は国税庁ホームページからマイナンバーカードを使ってe-Taxで申告する際に、マイナポータルを経由して年末残高情報を連携し、確定申告書の該当項目に自動入力できる。これによって納税者の書類の準備や申請手続きの手間を削減し、手続き漏れの防止にもつながるとされている。

 年末残高情報を格納した旨の通知がe-Taxのメッセージボックスに届くのは、納税者が「マイページ」での登録を行った時期によって異なる。国税庁がまとめた「住宅取得資金に係る借入金等の年末残高等情報のマイナポータル連携に関するFAQ」によると、住宅ローン控除の対象となる家に住み始めた年の年末までに登録をすれば翌年2月中旬、1~2月初旬までの場合は「順次」、2月中旬~10月までの場合は「登録を了した日から2~5日(土日祝日を除く)」とされている。

 なお当該方式に対応した金融機関は、国税庁の「年末残高調書を用いた方式(調書方式)に対応した金融機関の一覧」によると、24年開始が21金融機関、25年開始が28金融機関(25年1月時点)にとどまっている。

<タックスワンポイント>治療目的のマッサージ医療費控除可  体調整える施術控除NG

 医療費控除は基本的に医師による診療や治療を受けたときに利用できる制度で、「60分2980円」などの看板を掲げている民間マッサージ屋で施術を受けた費用は控除対象にならない。だが、マッサージの中でも、あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師が行う、病気やケガの治療を目的としたものであれば費用を所得から控除することが可能だ。

 控除できるかどうかの境界線は必ずしも明確ではないが、単に疲れを癒すものや体調を整えるものは対象外となる。例えば「定期的にマッサージを受けないと体調が悪くなりやすい」といった理由で受ける施術では、医療費控除の適用について税務署に納得してもらうのは難しい。何らかの症状を直す治療の意味合いがあることを証明できるかどうかがポイントとなる。

2025年6号(2025/2/13)

<タックスニュース>政府 財務省が概要、本格的な審議スタート  税制改正関連法案を国会に提出

 政府は2月4日、「所得税法等の一部を改正する法律案」を国会に提出した。これにより2025年度税制改正関連法案の本格的な国会審議がスタートする。

 財務省がまとめた同法案の概要では「物価上昇局面における税負担の調整及び就業調整対策の観点から、所得税の基礎控除の控除額及び給与所得控除の最低保障額の引上げ並びに大学生年代の子等に係る新たな控除の創設を行う」「成長意欲の高い中小企業の設備投資を促進し地域経済に好循環を生み出すために、中小企業経営強化税制を拡充する」「国際環境の変化等に対応するため、防衛力強化に係る財源確保のための税制措置、グローバル・ミニマム課税の法制化、外国人旅行者向け免税制度の見直し等を行う」「これらにより、『賃上げと投資が牽引する成長型経済』への移行を実現し、経済社会の構造変化等に対応する」としている。

 個人所得課税では、基礎控除額を最大58万円とし、現状よりも10万円引き上げる。給与所得控除の最低保障額も10万円引き上げ65万円とする。19歳から22歳までの大学生年代の給与収入が150万円以下の場合、親が63万円の所得控除を受けられる特別控除を創設し、給与収入が150万円を超えた場合の控除額は段階的に減額して適用する(25年末の年末調整から適用)。

 防衛増税については、法人税に関し26年4月1日以後に開始する事業年度の法人税額から500万円を控除した額を課税標準とする税率4%の新たな付加税を創設する。

 相続に係る所有権の移転登記については、登録免許税の免税措置を2年間延長する。

<タックスワンポイント>損害賠償金分割払いは支払年の損金に  債務確定時の原則に従わず

 業務上のミスによって、損害賠償金を支払うことになってしまった。ただ賠償額が大きすぎるため、支払いは数年間に分けて払うことで先方と同意したとする。

 通常、業務の遂行に関連する損害賠償金は、その債務が確定したときの必要経費に算入される。いわゆる「債務確定主義」といわれる会計上の原則だ。

 しかし分割で支払う損害賠償金は、それぞれの額を実際に支払った年の必要経費に算入しなければいけない。分割払いは支払期日が到来してはじめて具体的に債務が確定するという解釈によるものだ。

 たとえ最終的な賠償金の総額について当事者間で合意があったとしても、総額を一括して未払金に計上することは認められず、その支払期日が到来する都度、その支払期日の到来した金額を必要経費に算入する。2つのやり方から好きなほうを選べるわけではないことに気をつけたい。

 損害賠償金のうち、保険金などで補てんされる金額があるときは、その金額を差し引いた金額が必要経費になる。またたとえ業務に関連していても、事故原因に故意・重大な過失があれば必要経費としては認められない。無免許運転、スピード違反、酒気帯び運転、信号無視などによる事故は、特別の事情がない限り重大な過失があったとされる。

 事故を起こしたのが従業員であった場合、その責任に応じて損害賠償金の一部を本人に負担してもらうのは法律上は可能だ。ただ事業主は社員の労働によって利益を得ている以上、社員のミスもある程度カバーすべきという考え方があるため、よほど大きな過失がない限りは請求は認められない傾向にある。

2025年5号(2025/2/6)

<タックスニュース>自宅担保に耐震改修費借入れ  70歳以上、利息分の支払いもゼロに

 国土交通省は、高齢者世帯の住宅耐震化を促進するため、住宅金融支援機構のリバースモーゲージローン「リ・バース60」を活用した耐震改修融資の新制度を設ける。金融機関への利子補給を実施することにより、利用者に対して無利子または低利子で資金提供できるようにする方針だ。

 「リ・バース60」は高齢者を対象とした住宅ローンで、住宅金融支援機構と提携する民間金融機関が窓口となって提供している。毎月の支払いは利息分のみとし、元金は利用者の死亡時に担保物件の売却代金などで一括返済する仕組み。国交省の案では、利用者が70歳以上であれば利息分の支払額もゼロにする。国が金融機関に利子補給することで、利用者は金利負担分まで実質的にゼロとなるわけだ。早ければ今年度末までに新制度を整備し、金融機関が新基準に沿ったローンを提供できるようにしたい考え。

 新たな制度では、耐震改修を条件に、利用者が70歳以上の場合は利息分の支払額もゼロにする。元金分はもともと返済していないので、毎月の支払額が実質ゼロとなる。60歳以上70歳未満の場合は、本来の金利の3分の2を国が利子補給し、利用者の金利負担を3分の1に抑える。対象となる耐震改修としては、柱の補強や屋根の軽量化などを想定している。

 国が住宅金融支援機構に出資。機構が資金運用して財源を捻出し、金融機関への利子補給に充てる。対象となるローンの金利には上限を設ける。24年度の補正予算で確保した21.6億円をこの事業に投じる考え。

<タックスワンポイント>応接室の絵画100万円以下なら減価償却  8年かけて損金化

 経営者が応接室に飾る絵画を画廊で2点購入したとする。ひとつは大きいサイズで150万円、もう1点は小さめで85万円だった。このとき、小さめの絵画については取得費を複数年に分けて損金にできるが、大きいサイズのものに関しては所得計算において損金化できない。

 事業で使う資産の多くは時が経過するごとに価値が減っていくため、法定耐用年数に応じて毎年必要経費として処理(減価償却)する。しかし、土地や借地権のほか、古美術品、古文書、出土品、遺物といった歴史的価値がある美術品は価値が減少しないので、減価償却の対象にはならず、経費(損金)にできない。また、いわゆる歴史的価値はなくても、取得価額が1点100万円以上の美術品も非減価償却資産になる。

 ただし、100万円以上の絵画でも、時間が経てば明らかに価値が下がるようなものであれば減価償却できる。例えば、会館のロビーや葬儀場のホールのような不特定多数の人の目に触れるような場所の装飾・展示のための絵画は減価償却資産になる。また、移設できない美術品で他の用途に使えないのであれば同様の扱いとなる。ちなみに絵画の法定耐用年数は8年だ。

2025年4号(2025/1/30)

<タックスニュース>全法連 景況感アンケート  最賃引上「許容できない」16.3%

 全国法人会総連合(小林栄三会長)はこのほど、「景況感アンケート」の結果を発表した。過去最大の引き上げ額となった2024年度の最低賃金について6割が「社会情勢を考えるとやむをえない」として許容する一方、「許容できない」との回答も16.3%に上った。

 この調査は会員法人の業績などについて毎年6月と12月に実施。今回の12月調査には「法人会アンケート調査システム」への登録事業者のうち13%にあたる1836事業者が回答を寄せた。

 全国加重平均で51円と過去最大の引き上げ額となった最低賃金について「どのように感じたか」という問いに、「許容できない」と回答した事業者は16.3%。「社会情勢を考えるとやむをえない」が62.5%、「妥当」が16.8%、「さらなる引き上げが必要」が4.4%だった。

 最賃の引き上げが経営に与える影響については、「あまり影響しない」が24.2%、「影響はない」が8.8%だった。一方で、「大きく影響する」が21.8%、「多少影響する」が45.2%で、全体の3分の2は影響があると回答した。

 賃上げに関する悩みや課題を問う項目(複数回答)では、「賃上げ原資の確保」(53.8%)、「人件費の増加による採算悪化」(51.8%)、「いったん上げた賃金を下げられないリスク」(42.9%)、「他社の賃上げによる人材確保への影響」(36.1%)、「社員のモチベーション」(31.5%)などが挙げられた。

<タックスワンポイント>突然の電話「税務署ですが」信用しないで  確定申告期は振り込め詐欺多発

 毎年この時期に増えるのが、税務署員を装って現金自動預払機(ATM)で現金を振り込ませる「振り込め詐欺」だ。近年では現金を直接狙うだけでなく、勤務先や取引銀行の情報を問い合わせる事例や、未公開株・社債の取り引きに関連して銀行の口座情報を聞き出そうとする事例など、さまざまな被害が報告されている。その手口も複数人がそれぞれ税務署、警察、金融機関を装うなど複雑さを増していて、「自分だけは大丈夫」と思わず、疑ってかかる心構えが求められる。

 国税局や税務署が金融機関の口座を指定した上で税金の振り込みや還付金の支払いのためにATMの操作を求めることは絶対にない。また本物の税務職員が税務調査や滞納整理を行う場合、必ず顔写真付きの身分証明書を携帯している。少しでも怪しいと思ったら身分証明書の提示や、直接税務署への問い合わせによる確認をすべきだ。仮に本当に税務署からの連絡であったとしても、一度「顧問税理士に相談して折り返し連絡します」と答える習慣をつけておくことも詐欺被害の防止には役立つ。詐欺ばかりは、いかに税理士が有能であろうとも、納税者本人が直接対応してしまうなどの場合には防ぐことができない。

 詐欺の被害は盗難などと異なり、雑損控除などの救済手段も適用されないので、被害に遭ってしまうと泣き寝入りせざるを得ない。警察や国税もこの時期には過去の被害例などを挙げて注意を呼び掛けているが、いたちごっこのように詐欺の手法は年々新しく、また高度化している。重ねて言うが、「自分だけは大丈夫」と思い込まず、不審な点がなくても必ず家族や顧問税理士、あるいは警察などに確認し、その上で周囲と相談して対応することが重要だ。

2025年3号(2025/1/23)

<タックスニュース>不動産オーナーの資産運用術  償却済み資産で資金調達

 不動産オーナーの資産運用の新たな選択肢として“エレベーターリース”が注目されている。1棟マンションなどの保有物件に設置されている減価償却済みのエレベーターを専門事業者へ売却し、その後はリースによって従来通りに利用していくスキームで、最終的には買い戻すことも、リース契約を再度更新することもできる。減価償却済みの資産を現金化して修繕費用に充当するなど、新たな資金調達手法として活用することも可能だ。

 エレベーターの法定耐用年数は17年。それを経過すれば減価償却が終了する。エレベーターリースは、そうした減価償却済みのエレベーターを専門事業者が購入し、そのうえでリース契約を物件オーナーと結ぶ。リース契約期間中の保守・メンテナンス費用はオーナーが負担する。将来的に「購入選択権」を行使できるように設定しておけば、オーナーが買い戻すこともできる。

 専門事業者であるエレベーターアセットのシミュレーション(東京・新宿区)によると、東京23区内で築25年・4階建て450kgのエレベーターの場合、同社が物件オーナーに一括で支払う買取価格は237万6千円(税抜、以下同)。オーナーは売却後、同社と10年間のリース契約を結ぶ。月々のリース料は1万4千円で、10年間の支払総額は168万円となる。リース期間終了時の購入選択権行使額は17万3280円。売却時に受け取った金額からこれらを差し引いても、オーナーの手もとには52万2720円が残る計算だ。つまり、同社から支払われた買取価格の11%~20%程度の収益が期待できる。ただし、当然ながら一時的に得た売却益には税金が発生してしまうので、それを避けたいのならば赤字の決算期にあわせての利用や、同じ事業年度内にまとまった支出が計画されているケースでの活用を検討したい。

 当然、売却時点での現金化のメリットも大きく、調達した資金を修繕費用に充てるなど、使途はオーナーが自由に判断できる。

 エレベーターアセットではリース事業に加え「エレベーター広告」のスペース提供も行う。オーナーから買い取ったエレベーターの内壁などにポスターを貼り付け、広告収入を得るという仕組みだ。マンションの住人など多くの人の目に触れるスペースであることから、広告効果は高いという。これにより、不要なポスティングチラシを減らす効果も期待できる。エントランス・集合ポスト周辺の美化が保たれることで、物件価値がアップして空室が減り、家賃収入のアップにもつながることだろう。広告クライアントとしては、ポスティング行為に対するマンション住民からの苦情や、不法侵入を疑われての通報・クレームなどから解放される。加えて、紙資源の無駄を省くことでゴミの削減と、環境に配慮した企業としてのイメージ向上にもつながる。

<タックスワンポイント>何がそんなにオイシイのか、小規模共済  払込や受取に複数の税優遇

 報酬はなるべく多くほしいが、報酬額を上げれば当然その分だけ所得税も上がってしまう。かといって報酬を絞れば、会社の利益がそれだけ増えて法人税が上がってしまう。そんなジレンマで、自分の報酬をどれほどに設定するか悩んでいる社長さんも多いだろう。そこで会社の税金を減らしつつ、社長個人の税金を増やさずに老後のための資産形成もできる「小規模企業共済」の活用を考えたい。

 小規模企業共済は、常時使用する従業員が20人以下(サービス業、小売業は5人以下)の会社役員か個人事業主が入れる共済制度で、社長本人以外にも、共同経営している家族従業員が入ることも可能だ。加入メリットとして、掛け金は全額が所得から控除され、さらに共済金の受取時には一括であれば「退職所得」として一定額までは課税されず、また課税されたとしても給与所得に比べて格段に低い税率が適用されることがある。さらに年金として受け取れば「公的年金等の雑所得」となり、これも1年当たりの受取金額を抑えることで非課税にすることができ、本人が亡くなって遺族が受け取れば「相続人の数×500万円」の非課税枠が使えるという、多重の税優遇が魅力だ。

 掛け金の上限は月額7万円で、その範囲内で小刻みに設定することができる。仮に月額7万円の掛け金を社長が支払い、その分を役員報酬に上乗せすると、社長個人としては増額された月7万円分がそのまま全額控除されて税金は増えず、老後の資産形成ができる。さらに会社としては、月7万円が給与支払いとして損金になり、年84万円の利益が減ることになる。個人と法人で、ダブルの節税につながるわけだ。

 メリットの大きい小規模企業共済だが、もちろん注意すべきポイントもある。一つは、節税効果だけを重視して掛け金を多めに設定すると、あとで支払いが厳しくなる可能性がある。掛け金は加入後でも減額させることができるが、減額した部分がそれ以降まったく運用されずに放置されてしまうという特徴がある。つまり掛け金を7万円に設定して5年間支払い、その後4万円まで下げると、差額の3万円分については、それまで5年間支払ってきたにもかかわらず、その後共済金が支払われる時まで出金も運用もできない“死に金”となってしまうわけだ。

 また加入期間が短いと元本割れしてしまうケースがあるなど、気を付けるべき点もある。それでも小規模企業共済は、加入要件さえ満たせるなら入っておいたほうがいいおトクな制度と言えるだろう。

2025年2号(2025/1/16)

<タックスニュース>国税庁動画チャンネル  確申期の一番人気は?

 YouTubeの「国税庁動画チャンネル」に登録された動画のうち、2023年12月~24年3月に最も多く視聴されたのは「スマホ申告、医療費控除の入力方法」のタイトルでアップされた約14分間の動画だった。国税庁が昨年の確定申告期の再生数をとりまとめたもの。

 この動画は、国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を経由して行うスマホ申告での「医療費控除の入力方法」を解説する内容。4カ月間での再生数は154万6315件だった。

 ほかに、「スマホ申告、マイナンバーカードを利用したe-Tax送信方法」(再生数68万9863回)、「マイナポータル連携(事前準備)」(同62万3346回)、「スマホ申告、ふるさと納税(寄附金控除)の入力方法」(59万467回)、「パソコン申告、医療費控除の入力方法」(52万8485回)などが多く視聴された。再生数の上位10番目までは、いずれも電子申告での入力方法や送信方法、申告書作成手順などを解説する内容のものだった。

<タックスワンポイント>期待はできない税金の時効最長7年  リスタートの時効中断、幕引きはない時効停止

 刑事事件の時効は、強制わいせつ等致死で30年、傷害致死で20年、業務上過失致死で10年など、罪状と刑罰の重さによって規定されている。さらに人を死亡させた犯罪のうち、殺人や強盗致死など法定刑の上限が死刑の犯罪については、2010年の法改正で時効がかからなくなっている。

 では納税義務にも時効はあるかというと、刑事事件と同様、時効までの期間が段階的に規定されている。所得税でいえば、期限内に申告していれば3年を経過すると国は税金を徴収する権利を失う。期限内に申告していなければ5年。贈与税の時効は基本6年。偽りや不正があるとき、また脱税に該当するときは、あらゆる税目の時効は一律7年となる。つまり税の時効の最長は7年だ。

 時効までのプロセスだが、漫然とカレンダーを眺めていればすんなりと時効が成立するというわけではない。基本的に時効までの期間内には必ず税務署から催促状が届き、6カ月以内に差し押さえがあれば時効は中断される。ここでいう「中断」とは、野球の試合が雨で一時中断するのとは違い、催促状の送付日から新たに時効までの期間がスタートする「リスタート」の意味を持つ。

 また、延滞していた本税を支払ったとしても、延滞税があれば時効は停止される。時効期間もリスタートせず、何年経過しても時効はなく、本人が死亡しても未納分は相続財産の対象になり、相続人に引き継がれる。さらに時効を意図的に狙って逃げたと判断されれば脱税とみなされ、刑罰の対象となり、加算税も課される。

2025年新年号(2025/1/9)

<タックスニュース>中企庁 認定経営革新等支援機関  早期の更新申請を呼びかけ

中小企業庁はこのほど、同庁ホームページに「認定経営革新等支援機関制度における早期の更新申請のお願い」を掲載。2025年度にかけて認定の更新申請が必要な支援機関が多数存在するとして、経済産業局での審査を円滑に進めるため、早期の手続きを呼びかけている。

 経営革新等支援機関制度は、18年7月に施行された改正中小企業等経営強化法により、すべての支援機関に対して更新申請が求められることとなっている。5年ごとに更新申請する必要があり、更新が認定されないと、その期間の経過によって認定の効力を失う。

 23年度後半以降は、更新申請数の大幅な増加が見込まれている。18年度に新たに認定を受けた支援機関が多く、これらが1回目の更新を迎えることに加え、12年度の制度開始時に新規認定を受けた支援機関が2回目の更新時期を迎えることが要因だ。

 更新は、所管の経済産業局に申請する。有効期間が満了する日の30日前までに更新申請が必要となる。

 中企庁によると認定経営革新等支援機関の数は23年度末で約4万機関。このうち「税理士」が47%を、「税理士法人」が9.9%を占めている。

<タックスワンポイント>確申期の「閉庁日対応」  国税庁が一覧とりまとめ

 国税庁はこのほど、2025年3月2日(日)に確定申告の相談対応と申告書の受付を行う税務署の一覧をとりまとめた。通常、日曜日には確定申告期でも対応していないが、当日に限っては「閉庁日対応」として申告書等を受け付ける。

 閉庁日対応をする税務署の一覧はホームページに掲載されている。税務署ごとに署内、署外会場、合同会場といったように対応場所は異なる。また、道府県内の一部の税務署で閉庁日対応を行う場合は、「確定申告電話相談センター」などでも道府県内の納税者の電話相談に答えるとしている。

 なお国税庁は、会場は混雑が予想されるとして、ホームページ上の「確定申告書等作成コーナー」を経由した自宅からのe-Taxを推奨している。